商標と原産地:製品を額面通りに扱う
商標の目的は、商品やサービスの原産地を示すことであり、消費者が自由かつ十分な情報に基づいて購入の意思決定できるようにすることですが、商標が正確ではない地理的な原産地を暗示する場合はどうなるのでしょうか。最近の米国では、商標における地名の使用が厳しく監視されるようになり、この問題に注目が集まっています。
パスタが「バスタ!」と言う時
バリラ社は「イタリアNo.1のパスタブランド」と自負していますが、それには理由があります。イタリアの消費財の国際卸売業者であるベル・イタリアによると、バリラは「世界最大のパスタ生産者 (the biggest pasta producer in the world)(イタリア市場の40~45%、米国市場の25%)」です。それだけではまだ不十分ですか?さらにStatistaの観測によると、2017年にバリラはイタリアのスーパーマーケットで最も広く販売されているパスタブランドであり、パスタを売っている通路の98%に並んでいるとのことです。
しかし、これらの実証的な主張によって、イタリア国旗の色の隣に「イタリアNo.1パスタブランド」という登録商標を持つバリラ製品は、イタリアで製造されているという暗黙のメッセージとなっています。少なくとも、カリフォルニア州の訴訟当事者であるマシュー・シナトロとジェシカ・プロストの目にはそう映るのでしょう。2022年6月11日に起こされた彼らの集団訴訟は、イタリア以外の国で調達された原材料を使ってニューヨーク州とアイオワ州で製造された 「虚偽で誤解を招く、欺瞞的 (falsely, misleadingly, and deceptively)」なラベルの製品が、「本物のイタリアのパスタに対する消費者の欲求につけ込もうとする」と主張しています。
2022年10月17日、カリフォルニア州北部地区のドナ・M・リュー判事は、バリラの却下の申し立てを一部却下 (denied in part)し、裁判への移行を認めました。イタリアNo.1のパスタメーカーが、係争商品が「米国産と輸入原料を使用した米国製」であることをあまり目立たなく開示することで、より直接的なイタリアとの関連性を克服できるかどうかはまだ分かりません。
不思議なことに、現在進行中のこの事件は、2022年6月23日にイタリアの最高裁判所(民事部)が下した判決の逆バージョンになっています。そこでは、英国で登録された商標“Luca Stefani”を使用して中国で製造された靴が、製品の原産地の「虚偽表示」を禁止する法律350/2003第4条第49項改定に違反すると判断されました (it was decided)。最高裁は、イタリア語の発音を持つこの商標は、「製品または商品が原産地に関する欧州の法律の意味においてイタリア原産であると消費者に信じさせるような方法で」使用されており、輸入者の側では「製品の実際の原産地に関する消費者の誤解を避けるための努力」が不十分であると判断したのです。米国の同業者が、このような誤解を不愉快に思うかどうかは、じきに判明することでしょう。
どんな結果であれ、思いがけずおばあちゃんの秘伝のスパゲティソースの瓶を見つけたときほど、悩むことはないでしょう。
テキサスで辛くて辛い
塩、コショウ、ガーリックを駆使するBBQピットマスターであれば、テキサスとノースカロライナではアウトドア料理のテイストが大きく異なることを語ってくれるでしょう。テキサスはウッドスモークの香りを生かしたスパイシーな味付けを好み、ノースカロライナはより甘く、よりビネガーな香りを好むのです。T.W.ガーナー・フード社が、ノースカロライナ州ウィンストン・セーラムでホットソースのテキサスピートを製造していることを知ったカリフォルニアのフィリップ・ホワイト氏が、いかに驚いたか、おわかりいただけるでしょう。
2022年9月12日、食品メーカーに対する訴訟 (suit against the food producer)の中で、ホワイトは、「虚偽のマーケティングと表示によって、被告(T.W.ガーナー・フード社)は、アメリカで最も誇り高い州の1つの文化と、本物の料理に参加したいという消費者の欲求を故意かつ意図的に利用している」と主張しています。
テキサスピートのブランドは、この州のスパイシーなレシピと、典型的な「アメリカンネーム」に由来する (owes its provenance)と言われているほど、誇り高いものなのです。1929年の創業者サム・ガーナー氏にとって、このアメリカらしさのスパイシーな要素が、彼の後継者たちが直面する裁判沙汰の原因になるとは思いもよらなかったことでしょう。
太陽と海とシャツ
ビーチとウクレレと謎めいたファッションの国ハワイは、その独自性を維持し地元企業を支援するために、新たな法的措置を検討しています。現在の法律 (current legislation)では、「メイド・イン・ハワイ」は、「卸売価格の少なくとも51%が州内での製造、組み立て、加工、生産によって付加された」製品にのみ適用されることになっています。
ハワイの平和で快活なイメージを利用し、非居住者企業が地元経済に不利益を与えることを防ぐため、この法律が存在しています。しかし、太平洋に浮かぶ島々の集合体であるハワイでは、生産資源に限りがあり、多くの原材料や素材をアメリカ本土などから輸入しなければならないことが問題となっています。火山性の豊かな土壌を持つハワイでは、世界的に需要のある半袖の夏服に必要な綿花を大量に生産することはできないのです。
そこでハワイ州産業経済開発観光局(DBEDT)は現在、「メイド・イン・ハワイ」のルールを緩和し、ハワイ企業の便宜を図る必要があるかどうか、またアロハ州のカラフルな勝ち馬に乗ろうとする企業を排除するかどうかを検討するための調査を行っています (undertaking a study)。
この研究の成果は、貴重なアイデンティティを守り、中小企業の振興を望む他の地域経済にとっても良い参考となるでしょう。それこそ、ココナッツを1つや2つ割る価値があります。
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